儲けたいなら「インサイト」読解力を向上させるべし

デジタルマーケティング

デジタルマーケティングではサイト内での顧客の行動の多くをデータで把握できます。そのため、ややもすると、生身のお客様の存在を忘れて、無機質な数字をいじくりまわすことに終始してしまいがちです。

しかし、マーケターとして差がつくのは、統計学的な知識やツールの操作方法ではなく、人を動かす心の奥底「インサイト」を読み取る力にあるのではと思います。

しかも、「インサイト」読解力はマーケターだけでなく、すべての職種に求められる力です。

この記事では、「インサイト」の理解とは何か、なぜ企業活動においてその力が必要なのか、どうしたら「インサイト」読解力を向上できるかをお伝えします。

インサイトとは

行動心理学によると人の行動の95%は潜在意識によるそうです。この潜在意識の深い部分、深層心理を「インサイト」と言います。

「インサイト」と「ニーズ」は混同されやすいですが別モノです。

「ニーズ」は質問されたらすぐに答えられるような表層的な心理ですが、「インサイト」は他人に言われてハッと気づいたり、ドキッとさせられるような深い心理です。

お客様の「インサイト」を見出してそれに向けて解決策を提示することによって、お客様の認識を大きく変えたり、感情を大きく動かしたりして、購買意欲を掻き立てられると言われます。

デビルインサイトとは

「インサイト」の中でもダークなものが「デビルインサイト」です。人前で口にするのがはばかれるような悪魔の心理です。

『セブン』という有名な映画がありますが、キリスト教では「暴食」「色欲」「強欲」「憤怒」「怠惰」「傲慢」「嫉妬」を人間を罪に導く「七つの大罪」として戒めています。これらは「デビルインサイト」と言えます。仏教だと「煩悩」です。

世の中でヒットした商品を振り返ると、「インサイト」をうまく衝いたコミュニケーションがされていることに気づきます。

有名な例が、2006年に発売された『サラダマック』。「サラダを食べたい」という消費者のニーズをもとに開発されましたがあまり売れませんでした。

その後、2007年に期間限定で発売した高カロリー(754kcal)のハンバーガー『メガマック』は大ヒットします。カロリーを気にせず、分厚いお肉にかぶりつきたいというデビルインサイトの「暴食」を衝いた好例です。

インタビューやアンケートでは、ジャンクフードを好む人と思われたくないので見栄を張って「サラダを食べたい」と答えた人のなかには、実は「高カロリーなジャンクを思う存分食べたい」と密かに思っていた人が多かったということでしょう。

企業活動において必要な理由

P.F.ドラッカーは次のように述べています。

企業の目的は顧客の創造である。したがって、企業は二つの、ただ二つだけの企業家的な機能をもつ。それがマーケティングとイノベーションである。マーケティングとイノベーションだけが成果をもたらす。他のものはすべてコストである。

『マネジメント 課題、責任、実践 上』(P74)(ダイヤモンド社)

また、マーケティングについてドラッカーの有名なフレーズがあります。

マーケティングの理想は販売を不要にすることである。マーケティングが目指すものは、顧客を理解し、顧客に製品とサービスを合わせ、自ら売れるようにすることである。

『マネジメント 課題、責任、実践 上』(P78)(ダイヤモンド社)

お客様が必要とする満足を見出し、それに対してより良い製品・サービスを提供することが、企業活動の根幹であるということです。

そして、「ニーズ」ではなく「インサイト」に対して解決策を提供できた企業の方がより大きな成功を収めています。

また、創って、作って、売るという『商売の基本サイクル』を考えると、営業やマーケティングなど「売る」を担う職種だけでなく、研究・開発、購買、生産、物流といった「創る」・「作る」を担う職種も「インサイト読解力」を有していることが望ましいです。

プロセスの下流のお客様の「インサイト」をすべての職種が共有することで、全体のプロセスが途切れることなく流れ、活動のベクトルを合わせることができ、最終的にお客様に提供できる価値を最大化できます。

「インサイト読解力」は営業やマーケティングを担当する一部の職種のみに必要とされる能力ではなく、すべての職種で強化すべき力です。

「インサイト読解力」を高めるには

顧客にインタビューする

デジタルマーケティングではデータが比較的容易にとれることが多いので軽視しがちですが、数字だけで「インサイト」を発見することは限界があります。また、アンケートでも本音を漏れなく書いてくれることはあまり期待できません。

定量データやアンケートを参考にしつつも、コアターゲットとなるお客様に対しては対面のインタビューを行うことをお勧めします。

視覚・聴覚のような定性的なデータからどうインサイトを発見するか、これこそAIでは代用できない人間固有の能力であり、一流のマーケターが有する能力です。

インタビューでは顧客にいかに本音を語ってもらえるかがポイントです。詳細は『本音を引き出すコーチング・コミュニケーション術』をご参照ください。

インサイト発見力が優れた方にインタビューに同席してもらったり、インタビューを撮影して一緒に振り返ってみたりすることによってインサイト発見力を鍛えましょう。

顧客の行動を観察する

「言っていることとやっていることが違う!」というのはよくある話です。よって、インタビューで得た情報を鵜呑みにせず、他の手法を併用することをお勧めします。

扱う商品やサービスによりますが、お客様に行動を再現してもらい、横でそれをつぶさに観察・記録することが有効なケースがあります。

例えば、ある商材を購入するまでの一連のスマホ操作を再現してもらったり、普段の業務内容を横で観察しながら、「なぜその行動をとったのか」を聞きます。

売り手が全く想定していなかった競合と比較検討されていたなど、行動観察から意外な発見が得られることも多いです。

自分の心に聞く

何かを購入した際の自分の購買行動を例になぜその行動をとったのかを自分の心に聞いてみます

これは自分だけでトレーニングできるおすすめの方法です。

自分の購買行動が全く合理的でないことに気づいて愕然としたり、人に言いにくい「デビルインサイト」が潜んでいたことに気づくこともあります。

自分の心理を理解することが、お客様心理の理解を深めることにつながります。

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